「どういう事が人にとって嬉しいか」を考える
選ぶ基準の変化
ここ数年で注目を集めているマーケティングワードとして、「体験価値」というものがあります。モノやサービスを購入した際に、その機能や性能、値段に対してではなく、購入に付随して体験できること・心が動かされることに価値が見い出されるようになってきました。
例えば、自然が好きな人が農業体験ツアーを購入する、コーヒー一杯の値段がそこそこしても雰囲気が良くくつろげるカフェに行く、などといった事がそれにあたります。「体験」「心地よい事」に対してお金を使う人が増えた、ということなのです。
高機能な商品や価格が安いといった物理的なことも購入する側にとって十分嬉しいはずですが、どうして「体験」に価値が置かれるようになったのかというと、巷に既に沢山の商品やサービスが溢れかえっているから。
そのため商品やサービス同士の差別化が難しくなり、どれを選べばよいのか分からなくなってきているからです。何かを購入する際に口コミを見てしまうことってありますよね。同じような商品をぱっと選ぶというのは確かに難しいなぁと感じます。
さて、この体験価値や心地良さを購入者・顧客に持ってもらうために特に大事なことは、下記の5つの要素を感じてもらうことだそう。
- 私向けのものだと思える
- 私にとって意味がある
- オープンで正直である
- 私の立場で考えてくれる
- いい気分にさせてくれる
何だか小難しく感じてしまいますが、購入者・顧客にとって物理的な付加価値ではなく心理的な付加価値が重要とされているのでしょう。
これらを踏まえて商品やサービスを提供する側として出来ることは、「人間はどういう事で嬉しい気持ちになるか」を考えて自分たちの付加価値を作っていくことだと思います。
“それ”を購入することで、元気になる、笑顔になる、おいしいと感じる、安心する、癒される、非日常を感じる、楽しくなる、嬉しくなる、自慢できる、知ってもらう、好みを選べる、特別感を感じる、といった事ですね。
作る側の強み
個人でお仕事をする場合でも、いつのころからか「付加価値」が大事云々言われるようになって久しいのですが、自分自身のやっていることに付加価値を付けるとしたら、どのようなことになるのだろうと考えています。
グラフィックデザインのスキルで依頼者に販促物を提供するとして、チラシなどの“物理的なモノ”が出来上がること以外で嬉しくなってもらえる事はあるのでしょうか。
お仕事をお受けする場合、依頼者との距離は企業に入っている場合よりも近くなります。
そのため依頼者からするとデザインや販促について気軽に相談しやすいことは安心感を得られますし、他にもやり取りが簡単であることや、内容更新がスピーディーに行えるなど小回りが効くことも利点として挙げられます。
けれど個人の間でやり取りをしていることなのでこれらの良い点は至って普通のことだとも思うのです。
販促物を作って使いたいという人は、何かしら「広めたいことがある人」「知ってもらいたいことがある人」です。作った販促物を介して他人に自らを知ってもらい、交流することが目的。
作るだけではなく、もう一歩踏み込んでそれの助けになることができれば“作り手側の強み”になり、お仕事を依頼される理由にもなります。
なので自身の強みを増やすためにも、普段から「どういうことが依頼者にとって嬉しいか」を考えながらお仕事していきたいと思っています。