「ユニバーサルデザイン」とお札のはなし
2024年、紙幣が変わりますね!
見本みたよ!という方が大半ではないでしょうか。
一万円紙幣、五千円紙幣、千円紙幣ともに表側にはホログラムが入っていてなんとも凝ったデザインです。
一万円紙幣は話題の渋沢栄一さん。裏側は赤レンガ駅舎が印象的な東京駅です。
参照:財務省 (Ministry of Finance Japan), CC 表示 4.0, リンクによる
参照:財務省 (Ministry of Finance Japan), CC 表示 4.0, リンクによる
彼が起業に携わった約500の企業を見てみると、現・みずほ銀行や現・東京商工会議所、東京証券取引所など圧倒されてしまいます。
そして五千円紙幣は津田梅子さん、千円紙幣は北里柴三郎さんに変わります。これらの人選については、明治以降に活躍した人物の中ではっきりとした肖像が残されていることが条件のひとつだそう。
参照:財務省 (Ministry of Finance Japan), CC 表示 4.0, リンクによる
参照:財務省 (Ministry of Finance Japan), CC 表示 4.0, リンクによる
人物のチョイスもさることながら、デザイン界隈で注目されたのはやっぱり金額の「数字の字体」についてです。
「なんだか数字が大きいね」
「こどものおもちゃみたいな字体だよね」
「お札の雰囲気に合わない」
…など個人それぞれの思うところがあるようですが、なぜ雰囲気の合わない数字が使われているのかというと、これは「ユニバーサルデザイン」(UD)というものを意識して作られているかなのです。
ユニバーサルデザインってどういうもの?
「ユニバーサルデザイン」(UD)というのは、「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用できるようにつくられたデザイン」のこと。
「年齢や能力」とは、小さい子供や加齢による見え方の変化、色弱等で表されている色とは違って見える、などです。「状況」とは、病院など身体が弱っている人々が多く集まる状況のこと。
そのような人たちにも判りやすくなるように、意図的にデザインしましょうね、結果多くの人が生活しやすくなりますよ!ということなのです。
(ただ、これは「バリアフリー」のように障害者や高齢者に限定していないそう。バリアフリーを作った結果として生じた問題を「後から除去する」ために「最初から誰にとっても使いやすいデザインで」解消する、という狙いもあります)
ユニバーサルデザインの例として、子供向けの箱菓子にUDを使おうとしている例を見たことがあります。
もともとその箱菓子の「あけくち」表示は、「赤の背景に白色のあけくちの文字」だったのですが、「赤」を判別しづらい子供たちにもあけくちが目立つようにしようと、赤い背景を黄色にし文字を黒に変更する、といった試行錯誤を行っていました。
ほかにも建物に使われている例として、病院のロビーの壁の色が診療科ごとに色分けされている光景を見たことはありませんか?
これは、目に疾患のある患者さんたちが診療科の場所を区別しやすいようにするという狙いがあります。このように多様な「色覚」を持つ人たちに識別しやすくしているデザインをカラーユニバーサルデザインといいます。
もしも自分が作ったチラシなどの制作物が色弱者にどう見えるかわからないな…なんてときは、色覚シミュレーションができるアプリやソフトの助けを借りることができます。
スマートフォンアプリでは「色のシュミレータ」iOS・Android対応(無料)や「色のめがね」iOS対応(無料)などがあり、イラストレータやフォトショップにも確認機能が備わっているので調べてみると良いかもしれません。
ユニバーサルデザイン書体というのもあるよ
また、ユニバーサルデザインを作るうえでは「書体」(フォント)にも気を配りたいところ。
書体(フォント)にはゴシック体や明朝体、楷書体など数多くの分類・種類があることはご存じの通り。そのなかでもユニバーサルデザインを意識して作られた書体を「ユニバーサルデザイン書体」(UD書体)と言います。
左が一般的なゴシック体で、右がユニバーサールデザイン書体として作られたゴシック体です。
右側の数字のほうが隙間を大きくとっていて判別しやすいように配慮されていることがわかりますよね。
このユニバーサルデザイン書体、できるだけ多くの人に認識しやすくするのために作られたこともあり、視認性に優れているのでユニバーサルデザインを作るうえで欠かすことができないものなのです。
以上をふまえて新紙幣を改めて見てみると、数字を太く大きくしているところや一万円紙幣と千円紙幣で「1」の書体を変えていること、指の感触で識別できるマークをお札ごとに位置を変えている…などユニバーサルデザインになっていることがよくわかります。
世の中が本格的にユニバーサルデザインにむかって動いているなぁ、と実感できますよね。
これからデザインをして販促物を作る場合、用途によってはもっとUDを意識して作っていくことになるだろうし、作る側としてはちょっとした課題だな、なんて思います。
「使いどころ」がとっても大事。